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『マラソン』を観て考えたこと(2005.07.18) [アジア映画]

自閉症の男の子がマラソンによって自信を取り戻していく韓国映画『マラソン』は噂どおり号泣した。同じ韓国映画『マイ・ブラザー』と非常に共通点が多い映画だ。障害を持つ兄、兄ばかりに過度の愛情を注ぐ母、兄中心に回る家庭から逃げ出す父、グレる弟。『マイ・ブラザー』はどちらかというと健常者の弟の方に視点がいっているのに比べ、『マラソン』は障害の度合いもより重い兄が主役ということでより重く、過激で、そして素晴らしい映画だと思う。この映画には実際にモデルがいて、この映画が初長編となる監督はその少年と一年間一緒にマラソンをしたという。『16歳の合衆国』の時も思ったが、障害者をドラマの核にするにはそれ位の長期の取材がいると思う-覚悟の問題も大きいと思うけれども。
しかしつくづくと思うのは韓国で作られる障害者たちが出てくる映画の素晴らしさだ。『オアシス』『マイ・ブラザー』『マラソン』と並べてみても世界ではトップクラスではないか。日本ではというと『ジョゼと虎と魚たち』『AIKI』が健闘しているだろうか。しかし『ジョゼ・・』は結局足が悪いジョゼを結局は捨てる妻夫木演じる男の子の冷たさと、『AIKI』は加藤晴彦演じる車椅子の男の子が中途障害者のため(事故により半身不随となった)かどうか、取り戻せない人生の苦みの方が強く感じられてしまった。どんな人生にも幸せや達成感や開放感がある、と二作品は言っていないように見える。途中で恋人ができたり生きていく気力を取り戻したり勿論いいことはあるのだが、結局は健常者ほどは幸せにならないことが自然と浮き彫りになってしまい、幸福感や開放感は一瞬のことで定着しない。
 「日本ではリアリティが求められ、韓国ではファンタジーが求められる」。これはドラマでの話らしいが、そのまま障害者映画にも当てはまるような気がする。私は韓国は儒教社会のため日本より障害者に対する目が優しいのだろうかと思っていたのだが、「日本以上に障害者が隠される社会である」というネットでの韓国人の書き込みを読んで、やはり作劇上の問題なのだろうかと考え込んでしまった。そもそも「冬のソナタ」でぺ・ヨンジュン演じるチュンサンは失明するし、「天国の階段」ではチェ・ジウ演じるチョンソも失明しテファはチョンソに自分の目を与えるために自殺するし、「悲しき恋歌」では盲目のヘインとそれを支えるジュニョンの恋愛話だし、韓国ドラマでは「見えないこと」が流行っているようだ。しかしあざといとは思いながらも見えないままユジンを受け入れるチュンサンに、チョンソのために車で突っ込んでいくテファに、見えないが故にすれ違ってしまうヘインとジュニョンには落涙を禁じえない。
だって韓国のヒーローたちはいくら恋人に手がかかっても、自分に不利になっても、妻夫木みたいに障害者の恋人を捨てたりしないんだもの。新潮7月号の四方田犬彦先生の「ヨン様とは何か」を読みながら、「もっと簡単なことなんじゃないかなぁ・・」と思う。いや日本人女性の『冬のソナタ』受容の際の特異性についての優れた論ではあるのだが(四方田氏は『冬のソナタ』をハンの要素の少なさ、そのコスモポリタリズムの強さにおいて他の韓国ドラマや映画との間に一線を引く)、各ドラマの特徴ではなく、韓国ヒーローということで括ると弱いもの、虐げられるものを見捨てないのは彼らの最低条件であるように思われる。だって単純に、かっこいいじゃん。目の見えない彼女を甲斐甲斐しく世話するクォン・サンウと足の悪い彼女を見捨てる妻夫木とどちらに惹かれるかといったら女だったら誰でも前者でしょう。被害者意識にも加害者意識にも鈍感で、兵役もない日本人男性よりも人の痛みが分かる韓国男性に走ってしまう日本人女性が多いのは当たり前、などと決めつけて断言するつもりはない(実際の韓国男性を知っているわけではなく、あくまでドラマ上の話なので)。だけど雰囲気で足の悪い彼女と付き合い、結局はその彼女を捨てないと自分を守りきれない妻夫木の流す涙は、今時の日本の若者の立たされている場所の苦しさ、優柔不断さをよく表しているような気がする。
日本で作られる障害者ドラマや映画があまり美しいファンタジーを作り上げられないのに較べ、韓国映画やドラマでの夢み、涙し、恋し、あきらめず、愛される障害者たちを見ながら私たちは何かに気づかなければいけないのではないか。それは自身の小賢しさか、効率を優先し夢みることさえできなくなっている矮小さか、草原で大好きなシマウマの後を嬉しそうに走る『マラソン』の主人公を見ながらそんなことを考えた。


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