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カズオ・イシグロと映画 [映画・ノンジャンル]

原爆のことを調べていて、吉田喜重監督が「長崎をめぐるカズオ・イシグロの小説の映画化の企画を、長きにわたって暖めてきた」という記述にぶつかり、といったらそれは「遠い山なみの光」以外ではありえず、『鏡の女たち』を撮ってしまった今となって、そんな企画がまだ実現可能なのかどうかわかりかねるけれども、確かに原爆投下後の長崎を生きた初老の女の、現在と過去の回想が入り混じるこの中篇は、吉田監督が好んで取り上げそうな題材であり、雰囲気を持っている。

カズオ・イシグロはインタビューなどで映画好きだと語るし、実際に『世界で一番悲しい音楽』と『上海の伯爵夫人』の脚本を担当したりもしているのだけれど、脚本家としての手腕は置いておいても、小説の映画化という面で相性がいいのかと考え始めると、少し疑問に思うところがある。『日の名残り』は未見なのだが、『上海の伯爵夫人』はどうにも成功作とは言いかねるし、何より彼の小説は映画的なところを持ちつつも、一番の魅力として根底にあるのはやはり最も小説的な仕掛けではないかという気がするのだ。

とはいいつつもちゃんとした監督が映画化したらいい映画になるだろうなぁ、と思う作品はいくつかある。まず「わたしたちが孤児だった頃」。あまりに映画的・官能的な描写に恍惚とした覚えがあるので。それからもちろん最新作の『わたしを離さないで』。これは『世界で一番悲しい音楽』と同じくらい、物悲しい映画になるだろう。観たい気もするが、観たくない気もする。そういえばイシグロはいつも、「はっきりと知覚してしまうことの残酷さ」を、言っているような気がする。それは即ち、世界の残酷さである。「はっきりと見せないわけにはいかない」映画で、そのニュアンスが出せるか、そこがイシグロの小説の映画化の、難しいところではないだろうか。

わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)

わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)


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