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TBSドラマ「マラソン」 [映画・ノンジャンル]

二宮和也の演技が素晴らしいという新聞評につられて20日の夜にTBSで放映された「マラソン」を観た。原作「走れ、ヒョンジン!」は韓国に実在する自閉症の青年をモデルにしており、韓国で映画化され、日本でも『マラソン』として公開されヒットしたので覚えている方も多いだろう。

『マラソン』は公開当時観てとても感動したのだが、実話をもとにしたこの映画が、他の事故やら記憶喪失やら失明やらの不幸をテンコ盛りにした「泣ける」韓流映画と一緒くたにされてしまうことへの違和感を感じた。しかし実話と作りものの違いという以外、私自身その違いはよく分かっていなかった。細かいところに違いはあるものの基本的なストーリーラインはほぼ変わらない今回のドラマを観て、分かったことがあるので書いてみたいと思う。

一人で何かができないわけではないが、「適正に」何かをすることが難しく常に周りのサポートを必要とし、周りに迷惑をかけることも多いヒョンジン=彰太郎と母親の癒着というか共依存のような関係は、分かってしまうだけに胸がつまるものがある。「息子のためになると思って走らせていた」母親が、「自分のために走っていたのだ」と思い込み、もう走らなくていいと彰太郎に言い、そんな母親を振り切って彰太郎は一人でフルマラソンに出場する。他の選手が走り始めたのに母親に手を握られてスタートできない彰太郎が、しばらく逡巡したのちに母親から手を離し走り出す、シーンがやはり一番感動的だ。それから彰太郎は途中トラブルもあるものの、ずっと走り続け、ゴールするからだ。その間中観客は彰太郎と一緒に走り続け、彰太郎の苦痛と裏腹の快楽を、一人で伸び伸びと何かをすることの解放感を、やり遂げることの達成感を、共有することになる。

手を離す直前に、それによって苦難を乗り越えてきた親子間の合言葉が彰太郎によって囁かれ、それで母親の手の力が緩んでしまうことを見ても、このシーンがドラマのヤマとなっていることは明らかであろう。そして「子の積極的な親離れ」というテーマがずっとこれまで覆いかぶさっていた「自閉症」という症候そのもの、「自閉症の子を持つ親の苦労」などのテーマを突き破る、ところが感動的なのだ。ドラマはここに来て急にビルディングスロマンの顔をし始める。走り出した彰太郎の顔は確かに、急に大人びて見えるようだ。

障害を持つもののビルディングスロマン・・・はなかなか難しいのだと思う。一つには、あまりに典型的なビルディングスロマンを描いても、リアリティに欠いてしまうという問題があるだろう。もう一つの問題として、障害を持つものの視点にならないとなかなか成長が見極められないということがあると思う。マラソンを走りきること、が彰太郎にとってどんなに大変なことか、彰太郎の目線になってみないと分からない。それを映画で表現するのに、かなり細かい調整が必要となってくることだろう。健常者の視点で作り続けている限り、観客を感動させるようなビルディングスロマンを構築するのは難しいのではないかということだ。

映画とドラマの細かい違いという点では、映画では母と息子の共依存のような関係のつけで、弟はグレて、父は家を出てしまった。がドラマでは、弟はグレるというよりは拗ねている程度だし、父も家を出て行くもののそれは単身赴任が理由であり基本的には息子を愛するいい父親である。現実に近いのはどちらだろう、と考えるとどうも前者のような気がしないでもないのだが、これは映画よりも表現がマイルドになるドラマという媒体のせいだろうか。それともより田中美佐子が演じることによって健気さ、可愛らしさを増した母親の違いによるものだろうか。

新聞では「透明感のある」と評されていた二宮和也の演技も確かに素晴らしい。走りながら「人間っていいなー」と歌うシーンは映画版とは違う確かな存在感を感じた。誰しもこのドラマを見た後、どこかで自閉症の子を見かけたとしたら、彰太郎の純粋さ、一途さを想起し頬を緩まさずにはいられないだろう。過激な半面イメージ豊かな映画版も、全編を通して暖かさを感じられるドラマ版も、両方観たからといって、損することなど何もないだろう。

関連記事:『マラソン』を見て考えたことhttp://blog.so-net.ne.jp/miyukinatsu/2005-07-24-2


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